【開催レポート】不登校支援のゴールは「社会的自立」へ。地域と描く、誰ひとり取り残さない学びの形
- 学び支援協会
- 1月18日
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2025年12月16日、一般社団法人 学び支援協会は、山形県鶴岡市の出羽庄内国際村にて「学びの多様化カンファレンス 2025 in 山形・庄内」を開催いたしました 。
当日は、庄内地域5市町をはじめとする地域の教育関係者が集まり 、「誰ひとり取り残すことのない学びを、ふるさととともに」というスローガンのもと 、地方社会における不登校支援のあり方について熱心な議論が交わされました。本レポートでは、基調講演から各自治体・学校の実践報告、そして白熱したクロストークセッションの様子を詳細にお伝えします。
■ 基調講演:支援目標の歴史的転換 ― 学校復帰から「社会的自立」へ
講師:東北福祉大学 教授 中村恵子 先生
不登校政策研究に取り組む中村恵子先生は 、教育機会確保法から最新の「COCOLOプラン」に至るまでの政策変遷を整理しました 。支援の目標は、従来の「登校(学校復帰)」という結果のみを目指すものから、児童生徒一人ひとりの「社会的自立」へと明確に転換しています。
特に重要な指摘として、境界知能や学習面での顕著な遅れといった「学習困難」が不登校の大きな要因になり得る点に触れ、学業不振への的確な把握の必要性を強調。単なる出席扱いにとどまらず、校内支援室等での学習成果をどのように成績評価へ反映させるかという、具体的な評価手法についても提言がなされました。
■ 実践報告①:多面的な支援とオンラインネットワークの進化
報告:さいたま市教育委員会 主任指導主事 大高恭介 先生
さいたま市の大高先生からは、メタバースを活用した支援を含む多面的な取り組みが紹介されました 。メタバースによる学びの場では、オンラインで完結することでなく、対面交流の機会を設けたりして、子どもたちが多様な経験を積んでいけるような工夫も紹介されました。
大高先生は、メタバースによる支援はあくまで不登校支援策の一部であり、既存の教育支援センター等と組み合わせた重層的なサポート体制が重要であると述べました。
さらに、令和8年度(2026年度)に開校を控える「学びの多様化学校」の構想についても言及。これまでのオンライン支援で培ったノウハウを最大限に活用し、オンラインネットワークによる「広域設置型キャンパス」を展開することで、通学負荷を大幅に軽減し、子供たちの「通いたい」と「学びたい」を両立させる新たな挑戦が共有されました。
■ 実践報告②:設立のプロセスと社会との接点を広げる学び
報告:上山きらり学園 校長 西田浩 先生
山形県内初の「学びの多様化学校」である「上山きらり学園」校長の西田先生からは、開校に至るまでの設立経緯や準備過程が報告されました 。既存の学校教育の枠組みを再構築するプロセスは、今後同様の学校を検討する自治体にとって大きな指針となりました。
現在は、年間の総授業時数の削減や環境調整を徹底しつつも、決して「閉じられた学び」にしない工夫がなされています。子供たちの意向や心理的負荷を慎重に考慮しながら、外部との交流や体験活動を通じ、社会との接点や経験を広げる学びを段階的に取り入れているリアルの取り組みが共有されました。
■ 構想発表:地方における官民連携の新しいカタチ
報告:一般社団法人 学び支援協会
主催の学び支援協会からは、「オンライン教育支援センター」の構想について発表しました 。GIGA端末の学校外活用や、民間リソースとの協働など 、制度や施策だけでは届かない隙間を官民連携によって埋めていく、新たな支援モデルの必要性を提示しました。
■ クロストーク:地域一丸で築く「学びのセーフティネット」
最後に、中村先生、大高先生、西田先生に加え、地元・鶴岡市教育委員会の成澤和則教育長をパネリストに迎えたセッションが行われました 。

成澤教育長からは、教育委員会内に担当指導主事を増員し、教育支援センター「おあしす」の拡充や民間フリースクールとの連携を一元的にマネジメントする、鶴岡市独自の強固な組織体制が紹介されました。地方都市ならではの課題を共有しつつ、地域全体を一つの学び場とする多層的な支援ネットワークを構築することで、中学生が卒業時に「自らの進路を主体的に選択できる」状態を目指すという展望が示されました 。
パネリスト相互から「地域と不登校支援」という観点で意見交換が行われ、それぞれの地域に根ざした支援策への展望が示されました。
■ セミナー全体を通じた学び:総括
今回のカンファレンスを通じて、不登校支援は「学校に戻すための特別な措置」ではなく、これからの教育全体が目指すべき「個別最適な学び」の先駆けであるという認識が共有されました。
「社会的自立」を共通言語に:登校の有無にかかわらず、子供が社会に関わる力を育む。
多様な居場所のグラデーション:校内、校外、オンラインの選択肢を重ね、学びを保障する 。
環境調整と自己決定の尊重:授業時数や評価のあり方などの「環境」を子供に合わせて柔軟に変えていく。
学び支援協会では、今回の山形・庄内での議論を糧に、全ての子供たちがふるさとで安心して学び、未来を切り拓いていける社会の実現に向けて邁進してまいります。


